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つらい曝露反応妨害法を乗り切るコツ

こんにちは。心理カウンセラーの武田です。

 

強迫性障害(OCD)を克服するためには、認知行動療法のひとつである「曝露反応妨害法」が有効です。

 

当カウンセリングルームでも曝露反応妨害法をベースとしています。

 

今回は「曝露反応妨害法」がどういうものなのか、また、挫折せずに乗り切るコツについて書いていきますね。

 

曝露反応妨害法とは?

曝露反応妨害法は「曝露」と「反応妨害」の2つのパーツから成り立っています。それぞれを説明しますね。

 

①曝露

 

曝露はエキスポージャーとも呼ばれ、恐れている状況を避けずに直面することです。

 

文字通り、積極的に不安に曝される行為を曝露といいます。

 

不潔恐怖の人ならば苦手なものに触ってみることが曝露になります。

 

加害恐怖の人で人とすれ違っただけで大けがをさせたと不安になる人は、積極的に人とすれ違うことが曝露になります。 

 

②反応妨害

 

反応妨害とは、曝露した直後に、不安と取り除くための強迫行為や儀式をしないでおくことです。

 

不安になっても反応しない(ほうっておく)練習ですね。

 

つまり、不潔恐怖の人ならば、手洗いや除菌をしたくなってもしないでいることです。

 

加害恐怖の人は、気になる場所に戻って確認したりしないでいることです。

 

③まとめ

 

1.不安場面にできるだけ多く直面する。避けたいと思っても避けない。

 

2.不安を取り払うための強迫行為(洗浄や確認など)をやりたいと思ってもやらない。

 

3.1.2のステップを何回も続けていく。(長い期間するほど効果大)

 

 

つまり、曝露反応妨害法とは、強迫観念に襲われても強迫行為をしない練習をすることで、「強迫観念➡強迫行為➡強迫観念➡強迫行為➡」という悪循環を断ち切ることをねらいとしています。

 

強迫性障害の人は、「強迫観念さえ無くなればいいのに」と願います。

 

ですが、強迫観念は勝手に浮かんでしまいます。つまりコントロールがしにくいわけです。

 

実際、強迫観念を打ち消そうと考えれば考えるほど、強迫観念は執拗さを増してかえって不安が大きくなってしまうのですね。

 

だから、強迫観念とは戦ってもうまくいかないのです。

 

「強迫観念は放置して、強迫行為にこそ抵抗する!」これが曝露反応妨害法です。

 

強迫行為をせずに正しい行動をしていると、脳が正常に働きだして、結果として強迫観念が弱くなっていくのです。

 

強迫行為をしなければ、強迫観念もいつしか消えていくのです。

 

曝露反応妨害法はつらさを伴いますが負けないで

曝露反応妨害法は、強迫行為を我慢しなければいけないので、つらさを伴います。

 

ですので、取り組むにあたっては「つらくても絶対に治す!」という勇気と覚悟が必要です。

 

例えば、不潔恐怖の人には、苦手なものに触って、洗浄や除菌をしないこと(減らすこと)が求められます。

 

加害恐怖や確認強迫の人には、確認したい場面に直面しても、確認をしないこと(減らすこと)が求められます。

 

これはとってもつらいことですね。

 

なぜなら、今までは強迫行為(洗浄や確認)をすることで安心を得ていたのに、それをしてはいけないわけですから。

 

だから、最初はとっても不安が大きくなります。強迫行為を我慢するのはとても苦しいわけです。

 

最初はなかなかうまくいかない日もあるでしょう。

 

強迫観念の不安に負けて、「やっぱり我慢できない」と強迫行為をしてしまうこともあるでしょう。

 

ですが、そこで「もう無理だ」とあきらめてしまうと、残念ながら治ることはありません。

 

実は、最初の頃は、うまくいかない日があってもいいのです。

 

ですが、たとえうまくいかない日があっても「次こそ耐えてみせるぞ!」と再び粘り強く取り組む人が治っていくのです。

 

何度も何度も取り組んで、そのうち強迫行為を我慢できることが増えてきます。コツがつかめてくるのです。

 

曝露反応妨害法は、自転車の練習と似ています。自転車は最初はうまく乗れませんが、諦めずに乗り続けているうちにコツを体感できるのです。

 

それと同じですから、最初がうまくいかないからと言って諦めないでほしいと思います。

 

私も強迫性障害でした。今でも時折、強迫観念に襲われることがあります。

 

そんな私が日常生活に支障がないレベルまで治すことができたのも、曝露反応妨害を諦めずに取り組んだからだと思います。

 

そして、今でも再発しないように、強迫行為をしないよう心がけています。

 

つらい曝露反応妨害を乗り切るためのコツ

①強迫観念は脳の誤作動による「間違った警報」だから放置せよ!

例えば不潔恐怖の人は洗っても「まだ汚れている」という強迫観念が頭に浮かびます。

 

加害恐怖の人は事故など起こしていないのに「事故を起こしてしまったかも」という強迫観念が浮かびます。

 

確認強迫の人は鍵を今しめたはずなのに「まだ開いているかも」という強迫観念が浮かびます。

 

これらの強迫観念の正体を知っておくことで、不安を小さくすることができます。

 

強迫観念の正体は脳の「間違った警報」です。つまりウソです。

 

実際は、汚れていないし、事故も起こしていないし、鍵も開いていないのです。

 

脳が誤作動して、全く無用な「間違った警報」を出す障害が、強迫性障害なのです。

 

例えるなら、火事でもないのに、脳の中で「火事だ!火を消せ!」と間違った警報が鳴っているようなものですね。

 

ですので「まだ汚れている」とか「事故をしてしまった」とか「まだ鍵が開いている」というような強迫観念に襲われたときは焦らないことです。

 

そして、「これは脳が誤作動して、間違った警報が鳴っているだけだ」としっかり自分に言い聞かせるようにしましょう。

 

そして、間違った警報だから、慌てて手を洗ったり、確認をしてはいけないのですね。

 

つまり、間違った警報に反応してはいけないのです。

 

間違った警報に反応しない練習こそが「反応妨害法」なのです。

 

ただ、やっかいなことに、強迫行為をしないでいると、この間違った警報は、さらにしつこく頭の中で鳴ります。

 

「まだ汚れてるぞ!」「もし事故をしていたらひき逃げになるぞ!」「もし鍵が開いてたらどうする!」と大きな警報を出してきます。

 

脳の中であまりに大きな警報が鳴って不安になりますので、ここで我慢できなくなって強迫行為をしてしまう人は多いです。

 

ですが、ここが踏ん張りどころです。

 

その大きな警報も全て「脳の間違った警報」だから徹底的に放置してくださいね。

 

脳が一時的に誤作動して「エラーメッセージ」を出しているだけです。

 

エラーメッセージですから無視するように頑張ってくださいね。

 

間違った警報は放置しても恐れていることは起きませんから安心してくださいね。

 

間違った警報を放置して、強迫行為をしないで別の活動に集中していると、しだいに不安は小さくなっていきます。

 

②強迫観念か事実なのか迷ったら強迫観念である。つまり、ただの思い込みだから放置せよ!

「まだ汚れている」「事故をしたかもしれない」「まだ鍵が開いているかも」という考えが浮かんだとき、強迫性障害の人は、そのことが事実なのか強迫観念(思い込み)なのかわからなくなってしまうことがあります。

 

そして、考えれば考えるほど、本当のことのように感じてしまうのです。

 

もし、本当によごれていたらどうしよう!

 

もし、本当に人を轢いていたらどうしよう!轢き逃げになってしまう!

 

もし、本当に鍵が開いていたらどうしよう!泥棒に入られてしまう!

 

というふうに、まるで、さも本当のことであるかのように感じてしまうのですね。

 

こうなると不安がMAXになってしまい強迫行為をしてしまいがちですね。

 

ここで「事実」なのか「強迫観念」なのか判断する基準をお伝えしたいと思います。

 

「人を轢いているかもしれない・・・。これは単なる強迫観念なのだろうか?それとも本当に轢いてしまっているのだろうか?」と迷ったら、それは強迫観念です。

つまり、強迫観念かもしれないと迷ったら、それは間違いなく強迫観念(間違った思い込み)なのです。

 

だから、放っておいても恐れていることは起こりません。だから強迫行為をしてはいけないのです。

 

「万が一人を轢いていたらまずいぞ!」というのは、脳の誤作動による間違った警報なのです。

 

間違った警報に反応しないようにしてくださいね。

 

「かすかでも大丈夫だと思えたら絶対に大丈夫である」と覚えておくのも不安を小さくするために役立ちますよ!

 

③考えれば考えるほど不安になるから気をつけて!

強迫観念はとても嫌なものです。だから、打ち消したくなりますよね。

 

そこで、多くの人は、気になる場面の記憶をたどり、「○○だから大丈夫なはずだ」と安心材料を考えようとします。

 

例えば、車の運転中に加害恐怖の強迫観念に襲われた人は、「いや、さっきの音は人にぶつかった音ではないはずだ。たぶんマンホールを踏んだ音に違いない」などと、記憶をさかのぼって頭の中で大丈夫かどうかチェックするわけです。

 

絶対に大丈夫と思えるまで、理屈でもって強迫観念を打ち消そうとするわけです。

 

これは、頭の中で大丈夫かどうか確認する行為なので、メンタルチェッキングといわれています。

 

実はメンタルチェッキングも強迫行為の一つなのです。ですから、やればやるほど、強迫観念を強めてしまい逆効果なのです。

 

実際、私も経験があります。いくら頭の中で、「○○だから大丈夫だ!」と理由づけて安心しようとしても、強迫観念がしつこくからみついてくるのです。

 

考えても考えても「でも万が一、本当に人を轢いていたらどうする!ひき逃げになって警察に捕まるぞ!」と強迫観念が警報を送ってくるのですね。

 

するともう一度最初からメンタルチェッキングをしてしまうわけです。何度も何度も記憶をたどっているうちに精神的にとても疲れてしまうのです。

 

強迫観念が浮かんでいる時というのは脳が誤作動しているわけです。

 

誤作動している脳は、本当は大丈夫なのに「大丈夫ではないぞ!」と間違った判断をしてしまうのです。

 

ですので、誤作動している脳で考えることは得策ではないのです。不安になってしまうだけなのですね。

 

考えないようにして、別の活動に集中することが重要です。

 

どうしても考えたくなったら、「心配なことを考えるのは明日にしよう」と先延ばしするのがコツです。

 

考えることを先延ばしして、強迫観念をかわし、脳をクールダウンさせるのです。

 

強迫観念の相手をせずに距離をとっていると、時間とともに脳はクールダウンして正常に働きだします。

 

つまり、「大丈夫だろう」と正しく判断できるようになっていくのです。

 

大切なのでもう一度言いますが、強迫観念が浮かんでも、すぐに打ち消そうと考えてはいけません。

 

考えれば考えるほど強迫観念に捕まってしまいます。

 

ですので、「心配事は明日考えよう!」とひとまず棚に置いておきましょう。

 

そして明日になったらさらに「もう3日経ってから考えよう」とどんどん先延ばしすることがコツですね。

 

強迫観念について考えない時間を伸ばしていけば、そのうち気にならなくなっていきますよ。

 

そのときが、強迫観念が退散した時なのです。つまり、そのときが治った時なのですね!

 

④強迫行為を我慢できない時は先延ばし作戦で!

強迫性障害を治すためには、強迫観念に反応してはいけません。

 

つまり強迫行為をしてはいけないのです。

 

ですので①②③のコツを使って、なんとか強迫行為をしない時間を増やしてくださいね。 

 

ですが、どうしても強迫行為をしたくなるときがあると思います。

 

そんな時でも、すぐに強迫行為をしてはいけません。すると治らないのです。

 

そんな時は「30分待ってみよう」と時間を置く練習が大切になってきます。

 

30分間、先延ばしするわけですね。

 

そして、その30分間は、「今やるべきこと」だけに意識を向けるようにしてください。

 

③でも書きましたが、強迫観念について考えてもいけませんよ。考えれば考えるほど不安になるからです。

 

「強迫行為」も「考えること」も、30分間先延ばしして、別の活動に集中する練習をしましょう。

 

重要なのは30分後に、不安の大きさをチェックすることです。

 

強迫観念のことを忘れるくらい別の活動に集中していると、30分後には不安は小さくなっているはずです。

 

「よし、さっきより気にならなくなったな。じゃあもう一時間待ってみよう」とさらに先延ばしして、強迫行為をしないでいる時間を伸ばしていくことができればどんどん治っていきますよ。

 

曝露反応妨害法の「反応妨害」の部分を「反応を先延ばしする」わけですね。

 

強迫行為さえしなければ強迫性障害は治っていきますので頑張ってみてくださいね。

 

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