こんにちは。心理カウンセラーの武田秀隆です。
強迫性障害の加害恐怖でご相談される方はとても多いです。
特に車の運転に関する加害恐怖で悩まれている方は多いですね。
例えば、車の運転中に段差やマンホールを踏んだ時に音がしますよね。
その時に、加害恐怖の人は「もしかしたら人を轢いてしまったのでは」という「強迫観念」に襲われることがあります。
同様に、細い道で人とすれ違ったときにも、「ぶつかってしまったかも」という「強迫観念」に襲われることがあります。
「いやいや誰もいなかったはずだ!」「今の音は人とぶつかった音ではないはずだ」と自分に言い聞かせて強迫観念を打ち消そうとしますが、「でも万が一人を轢いていたらひき逃げになってしまう!」とどんどん不安になることが多いです。
加害恐怖の強迫観念と不安はとても強いので、自分の無罪を確認したくてたまらなくなるのですね。
そこで、現場に戻って確認したり、一緒に乗っている人に「人を轢いてないよね」と確認したり、事故のニュースが出てないかテレビや新聞を確認したりします。
この確認行為を「強迫行為」といいます。
また、道路や交番で交通事故の看板を見つけると、「もしかしたら自分かも」という「強迫観念」に襲われる方もいます。
そして、実際に警察に問い合わせをする人もいます。警察に問い合わせる行為も「強迫行為」となります。
車に乗るたびに「人を轢いたのではないか」という強迫観念に襲われて、自分の無罪を確認しないと気が済まなくなるので、車の運転がとても疲れてしまうのですね。
こんな苦しい思いをするくらいなら運転しないでいようと諦めてしまう方もいると思います。
当カウンセリングルームでは車の加害恐怖を薬なしで治すことのも力を入れています。
不安を軽くするためのアドバイスはたくさんあるのですが、この記事では5つだけ紹介したいと思います。
コツ1 加害恐怖の「強迫観念」は真っ赤な嘘と考えよう!
加害恐怖の人は、「車で人を轢いたかもしれない」とか「轢き逃げ犯になってしまう」という、たまらなく嫌な考えが頭に浮かびますよね。
この考えを「強迫観念」といいます。
実はこの強迫観念は、脳の誤作動によって生まれた「事実ではない考え」です。つまり「真っ赤な嘘」です。
実際は人を轢いたりはしていないのです。(本当はあなたも頭ではわかっているはずです)
だけど、加害恐怖の人は、脳内の眼窩皮質や帯状回の誤作動によって「人を轢いたかも」という「間違った警報」が鳴ってしまうのです。
そもそも、強迫性障害の加害恐怖というのは、脳の用心システムが誤作動して、本当は無罪なのに「やばいぞ!確認しろ!」と間違った警報・命令を送ってくる障害です。
「事故をしてしまったかも」とか「ケガさせてしまったかも」という強迫観念は、脳の機能障害だから浮かぶ考えであって、事実ではないのです。
「脳の間違ったメッセージなんだ!」「真っ赤な嘘なんだ!」としっかりと自分に言い聞かせるようにしましょう。そして次に書きますが、「強迫行為」をしないことが最重要なのです。
コツ2 加害恐怖の「強迫行為」に歯止めをかけろ!
頭の中に浮かぶ嫌な「強迫観念」を打ち消そうとする行為を「強迫行為」といいます。
加害恐怖の強迫行為をとして代表的なものは次のような行為です。
▢気になる場所に戻って事故していないか確認する。
▢他の人に「大丈夫だよね」と訊いて確認する。
▢新聞やテレビやネットで事故がないか確認する。
要は、自分が事故を起こしていないか確認する行為は強迫行為ですね。
この強迫行為。やりたい気持ちはとてもよくわかります。一刻も早く確認して自分の無罪を証明してスッキリしたい気持ちも理解できます。
ですが、この強迫行為はすればするほど、強迫観念を強めてしまい、治りにくくなってしまうのですね。
一度気になる場所に戻って確認してしまうと、同じような状況になった時に、同じように戻って確認しないとたまらなく不安になってしまうのです。
「確認しないと轢き逃げになってしまうぞ」という強迫観念が強くなってしまい、強迫行為をやめられなくなってしまうのですね。
ゆえに強迫行為をすればするほど治らなくなるのです。
逆を言えば、強迫行為さえしなければ治っていくわけです。
強迫行為をしないのは苦しすぎると思うかもしれませんが大丈夫です!
あなたはもともと無罪です!わざわざ強迫行為などしなくてもあなたの無罪は確定しています。
あなたはこれまでも、たくさん確認してきたと思いますが、本当に人とぶつかったという事実は一つもなかったはずです。なぜならあなたはもともと無罪なのですから!
もう一度言いますが、あなたはもともと無罪なのです。
無罪にもかかわらず、脳が「加害したかもしれない!今すぐ確認しろ!」という「間違った命令」を送っているだけなのです。
脳が誤作動して「早く無罪を確認しろ」と「間違った命令」を送っているだけです。加害恐怖というのはそういう障害です。
本当は確認する必要は一切ないので「間違った命令」にだまされてはいけません。
この間違った命令に従ってしまうと、その命令を出す脳の神経が太くなってしまいます。
つまり「もっと確認しろ」と間違った命令がどんどん発令されるようになり、治らなくなってしまうのです。
反対に「間違った命令なんか従ってたまるか」と無視すれば、命令を出す神経が消えていきます。
つまり、強迫行為をしなければ治っていくのです。
確認したくなったら、「間違った命令にだまされてたまるか」と自分に言い聞かせて確認をしないようにしましょう。
コツ3 強迫観念か事実か迷ったら強迫観念と断定せよ!
強迫行為をやめなければ治らないのですが、最初はなかなかうまくいかない人もいます。
なぜなら「万が一本当に人を轢いていたらまずい」という考えが浮かぶからです。
加害恐怖の人は、「人を轢いたかもしれない」と思い始めると、それが強迫観念なのか、本当の事実なのかわからなくなってしまいます。
人を轢いたというのは、強迫観念(思い込み)なのか、それとも事実として本当に人を轢いてしまっているのか、不安で不安でたまらなくなってしまうのですね。
だから、確かめに戻ってしまうことが多いのです。人によっては何度も確認する人もいます。
ですが、確認するとその時は安心できますが、同じような状況で次からも確認が必要になってしまい、治らなくなるのですね。
ここで大切なコツは、「強迫観念か事実か迷ったらそれは強迫観念と断定せよ!」ということです。
例えば、人とすれ違ったときにぶつかったかもしれないと不安になる時があると思います。
そのときに「人とぶつかった」というのは強迫観念(脳の誤作動による真っ赤な嘘)なのか、事実なのか迷う時があると思います。
そこで大切な考え方は、「迷ったらそれは強迫観念である」という考え方です!
つまり、「人とぶつかったかも」というのは脳の誤作動による間違った警報であり、ほんとうではありません!
いいですか!迷ったらそれは強迫観念であり、ぶつかったという事実はなくあなたは無罪確定です!
それでも不安だという人のために加筆しますね。
もしあなたが運転中に本当に人とぶつかったならその衝撃は「ぶつかったかも」などと呑気に迷っていられるレベルではありません。
本当にぶつかったなら迷うレベルの衝撃ではないのです。絶対にぶつかったとその場で判断できる大きな衝撃があります。
ですから、「もしかしたらさっきぶつかったかも」という考えは、全て強迫観念のしわざです。
コツ1でも述べましたが真っ赤な嘘です!ぶつかった事実などありませんので、確認してはいけませんよ。
コツ4 ほんのかすかでも大丈夫だと思えたら絶対に大丈夫である!
あなたは強迫観念に襲われながらも、「だぶん轢いてはいないだろう」と思えることも多いのではないでしょうか?
「たぶん轢いていないだろう」とか「おそらくぶつかっていないだろう。大丈夫だろう」と思えたら、それが正しい答えです。
絶対に轢いてないし、ぶつかってもいません。
その証拠に、あなたはこれまで何度も確認したと思いますが、ケガをさせた事実はなかったはずです。
ですので、「ほんのかすかでも大丈夫だと思えたら絶対に大丈夫!」と信じるようにしてください。
そして、強迫行為をしないことが重要です。
たまらなく確認したくなったとしても、それは脳の誤作動による間違った命令のしわざです。
そんなニセモノの命令に反応してはいけません!
ほんのかすかでも大丈夫だと思えたら絶対に大丈夫ですから、確認せずに過ごしていきましょう。
コツ5 それでも強迫行為をしたくなった時は先延ばしせよ!
何度も何度も言いますが、強迫行為をしたら加害恐怖をはじめ強迫性障害(OCD)は治りません。
ですからコツ1~コツ4を使って頑張ってほしいと思います。
ですが、それでもどうしても不安になり、戻って確認したい、人に訊いて確認したい、そんな時があると思います。
結論から言うと、そんなときでも、すぐに確認してはいけません。不安にすぐに反応したらダメなのです。
なぜならその不安は脳の誤作動による間違った不安だからです。確認しちゃうとその時点で負けなのです。
その時はすっきりしますが、今後も確認せずにはいられない気質になって治らなくなっちゃうのです。
では、どうするか?
「確かめるのは明日にしよう」そして「心配事を考えるのも明日にしよう」と先延ばししてください。
先延ばしすることで強迫観念をかわし、「今やるべきこと」に集中するようにしましょう。
心配なことをひとまず棚に上げて「今やるべきこと」に集中しましょう。
加害恐怖は考えれば考えるほど、強迫観念に捕まって、不安になることが多いのです。
ですから先延ばしして、考えない時間を作ることが重要なのです。
強迫観念をかわして、別の活動に集中していると、時間とともに少しずつ気にならなくなってきます。
「まだ気になるが、さっきほどじゃないな、もう1日待ってみようか」とさらに先延ばしするのがコツです。
強迫観念をかわし続け、強迫行為をしない時間をどんどん伸ばしていくと、「たぶん大丈夫だろう」という気持ちも大きくなってどんどん治っていきますよ。