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手洗いを1日に100回以上していた不潔恐怖の克服体験記

克服体験インタビューに協力してくださったのはNさん。30代の女性です。

 

Nさんは不潔恐怖で、一日に100回以上手を洗っていました

 

トイレの後やゴミ出しの後は10回以上手を洗い、また、少しでも汚れていると感じた物に触ったらその都度6回以上手洗いをしていました。

 

汚れが肉眼で見えているわけではないのですが、どうしてもイメージ上の汚れまでが気になって、洗わずにはいられなかったそうです。

 

苦しいのは手洗いだけではありません。買い物などの外出も困難でした。

 

スーパーの商品やカゴや棚など不特定多数の人が触っているものが、汚染されていると感じて触れなくなり、買い物は全てご主人に頼っていたそうです。 

 

このままではいけないと勇気を出して買い物に行ったのですが、財布を道に落としてしまい、その財布が汚染されたと感じて拾えなくなりパニックになったこともあるそうです。

 

月々の水道代、除菌シート代がすごくかかり、経済的な悩みもありました。

 

家の床やテーブルやベッドは絶対に汚したくない聖域となり、何度も除菌シートで拭く毎日でした。

 

仕事帰りのご主人がその聖域を触ったりすると、「どうして汚れたままで触るの!」と感情的に怒鳴ってしまい口論が絶えなかったそうです。

 

症状もどんどん悪化し、このままでは離婚の危機と私のところに相談に来られました。

 

治療を開始して最初の1か月は強迫観念に負けて、手洗いを必要以上にしてしまう日もありましたが、3か月後の現在ではトイレ後の手洗いは2、3回までに減らすことができました。

 

目に見えない汚れならば手を洗わなくても過ごせるようになりました。除菌シートも買わなくなりました。

 

家の中の聖域にも拘らなくなった頃から、買い物も一人で行けるようになったそうです。

 

まだ治療は継続中ですが、同じような症状で苦しまれている方の役に立てるのであればとインタビューを受けてくださいました。

どうしてカウンセリングを受けようと思ったのですか?

【Nさん】今年に入ってからどんどん症状がひどくなってきて。以前は買い物は平気だったのに。

 

あれも汚れている、これも汚れていると、どんどん気になるものが増えていったんです。

 

手洗いの回数もどんどん多くなって、手洗いだけじゃ気が済まなくなって何度もシャワーを浴びたりしてて、このままじゃ生活ができないと思ったんです。

 

そこで強迫についていろいろ検索して調べていたら、武田先生のyoutubeが出てきて、この先生に相談したいと思ったんです。

 

先生も強迫の経験者だから、苦しみをわかってくれそうと思って申し込みました。

 

あと、料金的にも電話の3回コースで12000円と安かったので(笑)。

どんなカウンセリングでしたか?

【Nさん】私は遠方だったので電話でのカウンセリングだったのですが、まずは丁寧に症状を聴いてくださいました。

 

この病気になってから自分に自信がなくなっていたのですが、先生に「Nさんが悪いわけじゃないよ」と言ってくださって、すごく救われました。

 

わかっているのにやめられない強迫の苦しさを理解してくださったうえで、後半は治すためのアドバイスをしてくれたのですごくよかったです。

 

治すためのアドバイスは、強迫観念が浮かんでも強迫行為をしないということなのですが、私の場合は「手洗いを最大2回にすること」「汚れが目に見えなければ洗わないこと」「積極的に苦手なものに触って、その手で汚れを家じゅうに広げること」などの目標を決めました。

 

大切なポイントは先生が「ここはメモして何回も読んでね」と言ってくれます。電話を通しての勉強会みたいな感じです。

 

先生の教えで私が一番支えとしているのは、「強迫観念が『もっと洗え』と言ってきても、それは脳の誤作動による「間違った命令」で何の価値もない」です。

 

私はこの言葉を画用紙に書いて、洗面台の上に貼っています。これを今でも毎日読んで、手洗いに歯止めをかけています。

 

2回目以降のカウンセリングは、まずはできたところと、できなかったところの整理をして、次の目標や作戦を立てます。

 

最初のころは、手洗いを2回にするのが苦しくてどうしても5,6回してしまう時もあり、先生に叱られるか心配だったのですが、先生は叱ったりしないで、少しでもできたところをほめてくださったのでホッとしたのを覚えています。

 

何度も何度も大切なポイントを学んでいくうちに、「強迫観念なんか脳の間違ったメッセージだから無視して洗わなければいいんだ」と思えてきて、強迫行為をせずに我慢するコツを習得できました。

 

1回のカウンセリングは約2時間で、かなり充実した時間です。これが3回で12000円でほんとにいいのですか?といつも先生に聞いてしまいます(笑)

 

行動療法は苦しかったですか?

【Nさん】正直、めちゃくちゃ苦しかったですね~(笑)。手洗いをやめたら禁断症状が出ちゃうんですよね。それがつらかったです。

 

手洗いは2回でやめて洗面所を一度は出るのですが、ものすごく嫌な感覚に襲われてもう一度戻って洗い直したくなりました。

 

ここで洗い直してしまうと、また手洗い中毒になってしまうので我慢するのですが、気持ち悪さはMaxでした。

 

強迫観念が脳の中で暴れて「嫌な感覚」や「もっと洗えという命令」をしつこく送ってくるので、本当に戦いでした。

 

「これは無意味な強迫観念だ。脳の間違ったメッセージだ!」と自分に言い聞かせて洗わないようにしていましたが、理屈よりも強迫観念のほうが強くて、正直、洗っちゃうこともありました。

 

でも、「次こそ洗うもんか」とあきらめなかったのが良かったと思います。

 

ほんと一進一退でしたね。だけど手洗いを我慢して他のことに集中するようにしているうちに、洗わなくても大丈夫になってきました。

 

強迫観念は無視して、洗わないことが一番ということが、最近になって実感できるようになってきました。

 

あと、一番苦しかったのが「聖域を汚して無くす」という練習です。

 

聖域があるとそれを守ろうとして何度も除菌したり手を洗ったりしてしまいます。

 

だから聖域を汚してしまい、汚れに慣れることが大切だという理屈はわかってはいるのですが、これは恐怖でしかありませんでした。(笑)

 

ゴミ出しをした後は、服をすぐに着替えて手もめちゃくちゃ洗っていたのですが、先生のアドバイスを信じて覚悟を決めてゴミ出しした服のままでベッドにダイブしました。

 

手も洗わないままで床を触ったり、汚れを家全体に広げました。

 

最初は「もうおしまいだ~」と嘆いたというか本当に泣いちゃいました。

 

実際は汚れなんか見えないので汚れてないことは頭では理解できているんですが、すぐに除菌シートで拭き直したい衝動に襲われました。

 

だけど、それじゃ意味がないですよね。だから、泣きながら汚れを広げ続けました。

 

最初の2時間くらいは気持ち悪さMaxでしたが、時間が経つにつれて、少しずつ、もうどうでもよくなってきました。そこで生活するしかないですしね。

 

その日は、そのベッドで眠ってしまったんですが、不思議となんかすごく楽だったんですね。

 

「もう汚れたからいいや~。床もベッドも全部汚れてるし。シャワー浴びたところでまた汚れるし。これ以上気にしても仕方ないや~」と開き直れた感じでしたね。

 

この練習はめっちゃきつかったですけど、汚れを受け入れたほうが楽かもという気持ちが芽生えたような気がします。

 

今は、ベッドや床を掃除するたびに聖域が復活してしまい、またきれいな状態を守ろうとしてしまう自分がいます。

 

そうするとまた手洗いや除菌が増えてしまうので、もう一度、聖域を汚す必要があるのですが、毎回恐怖がありますね。

 

武田先生は「見えない汚れを洗いたくなる衝動は全て、脳の間違った信号だから無視しなければならない」と教えてくれました。

 

だけど強迫観念はしつこく「早く洗え!もっと洗え!もっと除菌しろ!」と言ってきます。

 

武田先生の言葉を信じるか、強迫観念の命令を信じるか、どっちを信じるべきか。

 

最初は強迫観念の命令があまりに強烈で無視できず、強迫行為をしてしまうこともありました。

 

だけど、治療して3か月。今は武田先生の言葉の正しさを実感しています。

 

私は強迫観念を信じないで、武田先生の言葉を信じて、さらに症状を治していきたいです。

行動療法を3か月続けてよかったことは?

【Nさん】そうですね~水道代と除菌シート代が減りましたねって、まずお金かよって、ははははは。

 

でも、本当にお金がかかってたんですよ(笑)。

 

まあ、お金もありますが、トイレの後以外はあまり手を洗ったりしなくなったのが楽ですね。

 

トイレの後でも2回か3回で終わることができますし。

 

今でも、手を洗いたいな~という衝動には襲われますが、無視してそのまま生活を続けられるのが楽ですね。

 

ここで洗っちゃうとまた、手洗い中毒になりそうで、怖いというのもあります。

 

今は目に見える汚れがつかない限り洗わないようにしていますね。負担が減ってすごく楽ですね。 

 

あと、買い物も何とか一人でできるようになりました。

 

商品を手に取るときにちょっと嫌な感じはしますが、どんどん触っているうちに慣れてきたように思います。

 

家の中の聖域を無くす練習をした成果かもしれないですね。あれでたいぶ汚れを受け入れられるようになったと思いますね。

 

今でも「触りたくないな~」という気持ちはあります。だけど、同時に「触ってもいいかな」という気持ちもある感じですね。

 

あと、家の中に聖域がない状態にしてから、主人への巻き込みもかなり減りました。床はもうすでに汚れているわけだから。

 

強迫のことでの口論はほとんどなくなったと思います。別のことでケンカしてますが(笑)。

 

ただ、今ここで治療をやめてしまうと、また症状が戻ってしまうような不安もあるので、あと一か月ほど継続して行動療法を続けたいと思っています。

 

今後ともよろしくお願いします。

最後に不潔恐怖で悩んでいる方にメッセージを

【Nさん】そうですね。やっぱり私のように日常生活に支障が出てきた場合は、一人で悩まずに相談したほうがいいと思います。

 

強迫性障害は、強迫行為に歯止めをかける行動療法じゃないと治らないような気がします。

 

でも、これって一人で頑張るのはかなり苦しいと思います。

 

私も武田先生が途中で励ましてくれたり、私の症状にあったアドバイスをしてくれたので乗り越えられたのだと思います。

 

一進一退の日々ですが、頑張って行動療法を実行すれば必ず回復していきますよ。

 

Nさんインタビューご協力ありがとうございました。